小説『竜から妖精へ……』
作者:じーく()

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13話 竜から妖精へ












とりあえず・・・

名乗ってないのはよくよく考えれば事実だ。

メイビスには勿論、助けた2人、ジャックにも名乗っては無かった。

・・・・・・聴かれてないような気もするが・・・?

『悪かったな、俺の名は、ゼルディウス。よろしく。』

みんなの前で軽く頭を下げる。

こう見えても、礼儀はわきまえているつもりだ。

・・・・・・アイツのように、オレはこいつらが害虫とは到底思えないからな・・・

「よろしく!!ゼルおにいちゃん!!」

「よろしくぅ〜〜!!」

2人のダイブ!!

『おっとと。』

2人を受け止める。

すると・・・

「あ!!僕も!!」「私も!!」

って・・・

皆が束になって・・・

『ははは・・・』

重いとかそんなのは全く無いが・・・

『元気だな、お前ら・・・』

そっと出た言葉だ・・・




子供たちが騒ぎ・・・そして、それを微笑みながら眺めている青年達・・・







「ゼルディウス・・・」

ジャックが・・・考え込んでいた。

「黙示録で語られる竜の中で出てくる一頭・・・だ。」




そう・・・アクノロギアと対を成す存在・・・と呼ばれている・・

その存在はアクノロギアより記述は少ない。

なぜならば目立った行為をしてないからだ。

昔も・・・目撃自体が極端に少ない。

だが・・・

一頭・・・その一頭の行動だけで・・・

人が想像し・・・書き記す。

アクノロギアの破壊行動を目の当たりにした、王国のものは…

もう一頭が動き出せば、



・・・・・・・・世界が滅びる。



そうとまで言い伝えていた。

たった・・・一頭で・・・

瞬く間に王国を滅ぼしたのだ・・・

それが・・・二頭揃えば・・・?

被害は倍では済まされない・・・

まず…襲ってくる理由もわかってなかったからだ・・・

その・・・伝説の存在が・・・目の前の男・・・?

世界を滅ぼしかねない竜(おとこ)・・・?


「ジャック…」

メイビスが手を取る。

「…ん?ああ、もうあたふたしてねえのか?」

ジャックは直ぐに笑い顔を作る。

「もう!茶化さないで!!」

メイビスはまだ・・・ちょっと顔を赤くしていた。

今は・・・皆彼に注目してたから・・・解放されたのか? 苦笑

「んで、どうしたんだ?想い人の側にいなくて大丈夫か?」

ジャックは・・・笑っているが・・・目の奥の僅かな揺らぎにメイビスは気がついていた。

「・・・彼は、大丈夫です!貴方が心配してくれてるのはよく分かってます、いきなり彼を信頼するのは…難しいと思いますが。・・・私を・・・信頼してくれませんか?」

メイビスは…笑っていた。

・・・・・・見透かされてる・・・か・・・

「はっはは。お前さんは、本当にわからんな、少女のようにあたふたしてたと思えば、聖女みたいな面構えしてよ!」

そう言って笑う・・・

信頼・・・

まあ、あの男が悪い奴とは到底思えないのも事実。

何より・・・

「お前を信頼できないわけねえだろ?ちょっと考え事してただけさ。」

そう言って笑う。

今度は目の奥まで・・・心からの笑いだ。

「あ・・・ははは、安心しました。後・・・もう、からかうのは止めてくださいよ!」

プンプン怒る・・・

本当に・・・恋する少女そのまま・・・だな、


「マースタッ!」

ふと周りを見ると・・・マスターが離れていたのに気付いたサラがマスターの手を取る。

「サラッ!?」

驚いてるまもなく・・・

「早く!せっかくゼルお兄ちゃんがいるんだから!マスターも!!」

そして手を引っ張る!!

「わっわわ!!ちょっと待って!!もう、逃げないって!!」

メイビスは慌てながら・・・も・・・・覚悟?を決め 苦笑

顔を赤らめながら・・・再びゼルディウスの前へ・・・・・・









時刻は・・・何時だろう?

皆疲れ極まって、ギルドの中で寝ていた。

『ふむ・・・流石に力尽きたか?』

ちょっとあきれつつも・・・笑っていた。

そして、仲良さそうに寝ているランドやサラ・・・ギルドの子供たちにそっと毛布をかぶせてやる・・・

『・・・静かだな。よし・・・・少し、風に当たりに行くか・・・』

そう言って、ギルドの外へ・・・






外は・・・空一面に星々が一面輝いてる。

こんな風に・・・空を・・・星を眺めるのは久しぶりだ。

このギルドはこの星より輝いてるような気がするがな・・・


それにしても・・・

まあ・・・なんと言うか・・・

体力があるなぁ・・・こいつら・・・と。

そう思っていたのはゼルディウス。

もう 数時間ぶっ通しだ。

騒いでは飲んで・・・の繰り返し・・・

『ま・・・楽しかったがな・・・』

人との初の宴はな・・・




「ゼルディウス・・・・?」

・・・?

振り返ると・・・いたのは・・・

『なんだ・・・まだ眠ってなかったのか?メイビス。』

メイビスだった。

「いえ… 少し眠ってました。でも、気がついたら、貴方がいなくなってたから・・・ ちょっと驚いちゃって・・・」

そう言って苦笑いしていた。

『これだけ歓迎してもらっておいて、勝手に消えたりはしないさ。』

そう言って、ゼルディウスも笑う・・・

「私の・・・ギルド…どうだった?」

メイビスが・・・隣まで来てそう言う。

『・・・一言で言ったら・・・ 騒がしいな?』

苦笑しながらそう言う。

「ふふ・・・そうですね。毎日あんな感じですよ?」


『そりゃあ 凄いな… 退屈しなさそうだ。』

笑う・・・

(退屈しなさそう・・・ ということは・・・)

メイビスは・・・そっと手を取る・・・

『?』

手をにぎられたのに気付いたゼルディウスはメイビスの方を向く。

「もし・・・良かったら・・・ その・・・私のギルドに・・・・・・・」

顔が真っ赤・・・

いつまでも・・・側で・・・

誰より・・・貴方を見ていたい。




メイビスが言わんとすることは・・・

よくわかった。

好意を持ってくれている。

俺自身・・・まだわからないが・・・


間違いない気持ちはこのギルドと共にありたいという気持ち・・・


『ふむ・・・ 俺はお前たちのギルドは素晴らしいと思う。俺は・・・ 人の世界をよく見渡したかったんだ・・・ ちょうど良いかもしれないな・・・』

そう言って、メイビスの方を向く。

「あ・・・//」

メイビスはそれこそ・・・少女のように目を明るくさせ・・・

見つめた・・・

返ってくる…答えを・・・期待して・・・・


『迷惑でなければ、世話になりたい。妖精の尻尾・・・ そこに根を下ろしてみたい・・・かな。』


答えは… 最高の…

「め・・迷惑なんて・・・ そんなことあるわけが・・・//」

『ありがとな。』

こうして… 一頭の変わりものの竜は妖精への道へ歩き出した。










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