20話 闇の追撃
そして、ジャックを運んだ後
メイビスに事情を話した。
妖魔について…
その危険性や無差別性…
息をするように人を殺す、その凶暴性。
そしてその正体…
『あれは、裏魔法。その中でも禁忌の術だ。…「魂の牢獄」これは、使用者の魔力、そして かける者の闇への素質・魔力で如何な悪魔よりも強くなる。…そしてあれは暴走している。もはや最悪な殺戮兵器だよ。』
メイビスは…真剣な顔つきになる…
事の重大性をもうわかっているようだ。
「…わかりました、この旨は早急に魔法評議会に伝えます。…貴方の言い方から… 本当な危険な状態へとなっていっていると感じましたから。」
メイビスはそう言った…
その通りなのだ…
何故…ここ数日で…あの規模の暗黒魔法で…
それ程被害が拡大しなかったのか?
…犠牲となった人には申し訳ないが…あの暗黒魔法… 妖精の尻尾の中でも、最強の魔道士であるジャックの防護を打ち破ってダメージを与えている。
一般人が受ければどうなるか火を見るより明らかなのだ。
…だが 犠牲者の数は…少ない…
『少しずつ… 覚醒。謂わばリミッターが外れていっているようだ。想像の域だが、自分自身で押さえつけていたんだろう。そして、人気のないあの火山帯にいたのも頷ける。人気のないところに自ら行ったのだろうな。何とか制御しようと…だが、結果はあれだ…。』
制御は不可能。
言葉は持っていはいたが…
何度もおなじ言葉を繰り返していたのは、話が殆ど通じないのは、もう自我を失っている良い証拠。
かろうじて覚えているのは、術者の名前…ゼレフの事だけだろうな。
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メイビスは…評議会に通達…
そして、ギルドのメンバーに、S級魔道士を集めて、今回のことを伝えた…
「妖魔は、最早制御不能の歩く殺戮兵器だと思ってください。…ジャックでさえ…深手を負わせたほどです。これまで以上に大変な規模の事件となるでしょう。」
そう言うと…
皆真剣な顔つきになる。
スタイナーは勿論…
ディアスでさえ言葉が無い。
このギルドでS級はメイビスを含めたとすれば…4名。
後1人は王国を離れて遠出の仕事についている。
通信ラクリマで連絡は入れているが、戻ってくるのにかなり時間が掛かりそうなのだ。
…あのザファイ火山からこの場所は、謂わば射程範囲。
そして評議員に通達したのはついさっき、
…話し合いを含めたら対策部隊を編成するのにも時間が掛かるだろう…
「はっきり言っても評議員は この手のことには動くのが遅いので我々だけで街を守る事になりそうです。…皆さん大変でしょうが 力を貸してください…」
メイビスはそう言って頭を下げた…
それ程の事件なのだ…
「マスター!頭なんか下げないでくれ。」
スタイナーは笑顔でそう言う。
「そうそう!俺たちが俺たちの住む街を守る…当然の事じゃねーか!」
ディアスも…同様だった。
皆…笑顔でそう言った。
勿論…
『ははは…』
ゼルディウスも例外ではない。
ギルドで最強といわれた魔道士がリタイアしたというのに、
この士気だ…
普通ならば恐怖心に煽られてもおかしくないだろうに…
『オレもギルドの一員だからな… それに【あれ】を放っておこうとは全く思っていない。協力は惜しまない。』
そう言った。
「みんな…ありがとう…」
メイビスは…気付けば礼を言っていた…
そして、また皆が当然だといわんばかりに…
良いギルド…だな…
そして…
「対策は早いことに越した事は有りません。他の皆さんに通達をしてもらって、まずは街住民の避難・誘導をスムーズに行えるようにしてもらいましょう。」
メイビスは対策を話していく…
何をおいても、魔力を持たぬものがあの妖魔の側にいるのはかなり危険だ…
それこそ一瞬で…
それをさせない為に、見張り・避難・誘導を迅速に…
「そして、その後ですが…」
そう話そうとしたその時!!
ゴッ!!!!!!!!!!!!!!!!!
街に…
闇の波動が駆け巡ってきた。