小説『竜から妖精へ……』
作者:じーく()

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51話 笑顔に包まれて

























とりあえず、ジュード君を背負って街へと向かう……。

ジュード君の状態は簡単に見てみたけど……ただ、眠っているようだった。

鼓動も……しっかりしてるし。

上から落ちてきたって言ってたけど……。

恐らくはあのバルカンがクッションになったんだろう……



そして、その道中だけど……。


「レビィ……?」

「…………。」

そう、レビィの様子が……おかしい。

話しかけるけど……俯いたままで中々返ってこない。

なんだか……。

「その……ひょっとして、怒ってる……?」

ゼクトは……思わずそう聞いていた。

レビィは、いつも笑顔だった。

初めて会った時も……。

自分を起こしてくれた時だって。

いつも笑顔だった。

……素敵だと思った。

「え……?」

レビィは顔を上げてくれた。

「あ……っ!いやっ……怒ったりしてないよ?ほんとっ。」

レビィは両手で抑えるようにそう言う。

「でも、何だか 暗そうだったから……。レビィには笑顔が凄く似合うと思うから…。」

ゼクトはそう言う。

「あッ……//うん、ありがと……でもね……。」

レビィは顔を再び暗くさせて……。

「怒ってたっていうのはほんとに誤解だよ……。私……全然ゼクトの役に立てなかったな……って。」

そう言う……。

その手は……握り締めて……震えていた。

「私ってさ……やっぱし、役立たず……だったかな?手も足も出なくて……きっとゼクトが追っ払ってくれたんだよ……あいつらを……。私は……ほんとに……。」

そして、俯く……。

「………私の周りの……コ達……皆同じくらいなのに凄いの……でも、私は全然ダメで……でも、こんな私でも役に立てるかなっ?って思って……ゼクトのサポート……立候補したのに……。」

その目には涙が……。

「やっぱし……私は………。」

そういい……涙を流す。

もう……見てられなかった。



“ぎゅっ…………。”



ゼクトはレビィを抱きしめた。

「ぜ……ぜく……ト……?」

レビィはあまりの事に……気が動転しそうに……。

「そのっ……オレは上手くいえないけど……。」

抱きしめたまま……続ける。

「役立たずなんかじゃない……レビィは……。君がいてくれたから……【強さ】に気づけた……そんな感じがしたんだ。」

レビィを抱きしめる力を……更に強める。

震えを止めようとして……。

「この気持ち……思い出にだけになんかしない。優しさ……それを沢山レビィはくれた。ギルドの皆もそう。オレは……なぜかはわからないんだけど……。フェアリーテイルの事大好き……大好きなんだ。でも、皆からしたら、オレの事……知らないよね?当然……。それなのに、皆 オレの事家族のように迎えてくれて……。」

そして、レビィの顔を見つめる。

「家族に……レビィに暗い顔なんて……させたくないんだ。役立たずなんて本当に考えたことも無い。一緒にいってくれるって言ってくれただけでも嬉しかった。でも、レビィが自分が不甲斐ないって思うんなら……。」



「ッ……。」


「次にさ頑張ろう……?頑張って……今日よりも……明日。明日よりも……明後日。毎日毎日。少しずつで良いから……オレも手伝うから……。それにさっきの魔法も……凄かったよ?ほんとに……。」

そういい……最後には微笑みかけた。

「え……ッ……。ほんと……?」

レビィは……徐々に笑顔に……。

「うんっ!」

ゼクトは笑顔で手を上げる。

「家族には嘘をつかないッ!レビィは友達で……仲間で家族!嘘なんてつかないよ!」

そういった。

「家族……。」

レビィは……その言葉をかみ締める。

初めは……ゼクトの事、強くて……その上カッコいいし優しい……。

だから、憧れに似た感情だったんだと思う。

今……それは変わったと思う。

「私は……ゼクトの事好きだよ……。」

「え……?」

ゼクトは突然の事だから驚いて……。

「ッッ!!あ……わわわわ!私!何をっ!いやっ!そう言うアレじゃ……!」

レビィは告白した事……。

思わずうろたえていたが……。



“ガシッ!!”



ゼクトは両手を握る!

「ほ……ほんとっ!」

目を……輝かせていた。

「えっ……えっ……!」

今度は困惑するレビィ…… 苦笑

「オレの事……好きって……わぁぁ!凄くうれしい!ありがとう!レビィっ!」

凄くいい笑顔で……そう言う。

「えっ??そんな……に……?でも他だ「だってさっ!」ええ??」

ゼクトが直ぐに話し出す!

「今までは、一方的に……好きって思ってた。生まれて初めて……ッといっても、記憶があれだから少ないけど、オレが好きで……相手も好きッていってくれたの。レビィが初めてなんだっ!」

無邪気に笑う。

「え……あっ……そ……そう?」

レビィはその笑顔と言葉を聞いて……理解した。

この好きっていう言葉。

女の子が男の子にいうような【あれ】と考えてなく……。

純粋に……自分自身に好意を持ってくれて。

恐らく、フェアリーテイルのものだったら、老若男女問わず、

嬉しい事なんだろう。

「でも……いっか……今日は。」

レビィはそう思う。

迷惑もかけちゃったし、心配もかけた……。

その上これ以上望むのは……ダメだろう。

自分も成長しないと……。

「ん?」

ゼクトは笑顔のままレビィを見ていた。

「今日はありがとっ!私はゼクトの事好きだからね?ほんとに!」

「うんっ。オレも好きだよ。ありがとう!」

………傍から見たら……カップル?

まあ、子供だけど…… 苦笑





帰りは最初とすっかり変わって笑顔で帰宅になった。

まだ、ジュード君は眠ってるけど。

起きなくて良かったと思う。


(大きくなって……もっと特別に想ってくれたら……どれだけ嬉しいかな……?)


レビィはそう想う。

でも、それが難しい事はわかる。

ゼクトは皆の事が大好きなんだから…。

特別にっ……というのは、かなり難しい。

攻略不能……。

「いやっ!がんばるっ!」

レビィは拳を握り締める!

「わっ……!」

突然の宣言に驚くのはゼクト。

ちょっと声も大きかったし?

「え……うんっ!がんばろうね?」

ゼクトはそう返した。

多分……魔法の事とか、今日不甲斐ないって想った事の反省なのだとおもった。

だからそう返した……。

「む〜〜っ!ううん!がんばれっ!私!」

そんなゼクトにモヤモヤしながらも再び!

「………ん?」

流石にわからなかったようだ。













街にて……。


「あああ〜〜〜ん!!じゅーど〜〜〜!!」


“がしぃっ!!!”


必死に……ジュードに抱きついているのはルンちゃんだ。

あの後ジュードは目を無事に覚ました。

心配だったから……ギルドにつれて帰ってみてもらったけど……。

ほんとに外傷も特になく健康そのものだった。

本人も良く覚えてないとの事。

だから……。

「わあ……だいじょーぶだって……ほらっ。泣くなよ?」

ルンの頭を撫でて……。

「う”ん……ぼんどに……よがっだ……。」

涙で前が見えてない……。

「心配かけて……ごめんな?」

流石にそう想ったのだろう。

頭を撫でながら……そう言う。


「おにいちゃん!おねえちゃんもありがとう!」

ジュードは2人にそう言う。


「ん!大丈夫だよ!今度は気をつけてね?あの森にはあまり行かない事!どうしても用があるのなら、ギルドのみんなを頼ってね?」

そう返す。

「うん!」

ジュードは返事をした。

「ほらっ ルンちゃんも!可愛い顔が台無しだよ?無事だったんだから、笑顔で……ね?」

レビィはにっこりと微笑みながらそう言った。

「う……ううぅ……うんっ……。」

ルンはぎこちないが必死に笑顔を作る。

嬉しいのは間違いない。

その気持ちが通り越しちゃってるから…中々に上手くいかないのだろう。









そして……。

ルンも落ち着いた。


「またねっ!ゼクト兄ちゃん!レビィ姉ちゃん!」

「ありがと〜〜ッ!」


笑顔で手を振る2人。



「おうっ!またなー!」

「もう無茶はしないでね〜〜!!」



その2人に答える2人……。

そんな笑顔に包まれながら……。

初仕事、人探しは終了したのだった。

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