小説『ファミリア!』
作者:レイ()

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Out side 1

瑠樹が帰った後、私は何事もなかったように部屋の片付けをした
こんなことを急に思い当たったのは、久しぶりに人を家に入れたからだ
瑠樹が見ていない奥の箪笥には自分でも呆れるほど物が詰め込まれていた

衣類をまとめ、本格的に物をどかし始めると、何冊ものアルバムが出てきた
お母さん、お父さん、真ん中でいつも笑っている私
色んな季節の色んな場所がたくさん切り取られていた
私にとって、唯一両親に触れられる幸せな時間だった

もっと探ろうと箪笥の隅を手でまさぐる
アルバムではない、小さな木箱を見つけた

好奇心から開けてしまったのが、間違いだった
入っていたのは大量の手紙、『柏本祥二様』『北見アヤメ』

背筋を誰かに舐められたような、ゾッとする感覚が私を襲った
『・・・現在おかけになった電話番号は・・・』
こんなときに瑠樹は電話もメールも繋がらなかった、時間はもう遅かったが、私は混乱したままパーカーを着て、手紙に書かれていた住所へと走って行った

白い、小奇麗なマンション
そこに異様な雰囲気が漂っていた

螺旋階段の中腹に制服を着た血だらけの少女が横たわっている
瑠樹、だった

あたりには血の独特な酸っぱい匂いが充満し、嫌悪感が増幅されていく

___血が伝わっていく体、もう二度と起きてくれない・・・ああ、あの時と同じだ___
アスファルトに血がじめじめと模様を描いていく

「いやあああああああああああああああああ!!!!!」

私は自分でもわけが分からないまま階段を駆け上がる
ズルッと急に足場が滑り、慌てて手すりに掴まる
不幸中の幸いとでも言うのだろうか、打った足の痛みで頭が冷えていった

私は強張った上手く動かない指先で救急車を呼ぶ
自分が何を言ってるかもよく分からない、自分が自分じゃないみたいだった

『殺す…ッ、祥二さん以外は家にいらない!!!!!!!』

救急車が来るまでの間、留希愛の止血を行っている時、
上からそんな叫びが幾度も聞こえてきた

祥二さんって、お父さんの事?
どうして瑠樹はこんなことになっているの?
それに瑠樹もお父さんのことを知っていた

救急車のサイレンが近くなってくる
瑠樹・・・瑠樹は何か知っているの?

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