小説『先生は女子大生』
作者:相模 夜叉丸()

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その人が僕に目をつけた。僕を見るなり近づいてくる。予感と言うものは怖いもので、当たる時は恐ろしく当たる。バンドの酷さに対する不快感とインタビューされる緊張感が動悸を激しくさせた。
 「じゃぁ、君、何年何組?」
 
 「・・・1年、C組です。」

 「今まででどの曲が良かったですか?」
 
 「・・・・。」
 僕はだんまりを決め込んでしまった。もうどうすればいいか分からなくなってしまって混乱していたからだ。どうしよう、どうしよう・・・、何を言えばいいの?えっ、だって正直そんな良いものじゃなかったじゃない。あと、うんと、えと、えーと・・・・。
 音楽室が少しざわめき始めたのが僕をさらに混乱させた。
 「・・・・。」
 インタビュアーが困ってしまたのか僕をフォローする。
 「なるほど、決められないくらいみんな良かったってことだね。ありがとう!」

 「・・・・です。」
 気まずくなってさっさと次の人に行こうとしてたが、僕はか細い声で呟いた。
 「えっ?」

 「全然良くなかった・・・良くなかったです!」
 僕は、コンサートの時みたく、暴走を開始した。
 「まだ2組しか見ていないけどまず楽器のアンプの音量をMAXにしてヴォーカルの声が消されてるのが何だかおかしいと思いました!メインは歌なのに何か騒ぎたいだけの集団になってるのが良くなかったです!それにさっきのティーレックス、歌として成立してませんでしたっ!それに恰好ばかりにこだわるならどうすればちゃんと歌えるかを考えた方が良いです!!」
 先ほどのざわめきはすっと消えて、音楽室の中にいる僕以外の人は全員固まってしまった。ステージ上の太田たちも僕を呆然と見ていた。
 僕はこの後の記憶が曖昧だった。この凍りついた空気から何とか脱出しようと音楽室のドアを勢いよく開けて急いで逃げたことしか覚えてない。
 それから数日が経った。日曜を挟んで月曜日の登校日、行きたくなかったけど学校に行った。あんまり顔を見られたくなかった。特にあの場にいた人たちには。
 朝、人がまばらな下駄箱。真ん中らへんにある僕の上履きを取り出そうとした時、露骨に嫌味な声が後ろから聞こえた。
 「おい。」
 その声に僕は聞き覚えがあった。文化祭の音楽室、ステージ上でトレイン・トレインを歌った太田の声だった。
 振り返ると若林と武元も引き連れている。僕をにらんでいた。太田はポケットに突っこんでた右手を素早く出し、僕の胸ぐらを掴んだ。
 「あの時はよくも俺に恥をかかせてくれたな。」
 
 「あっ・・・えっ・・・。」

 「俺たち、文化祭でああゆうことやるのずっと夢だった。お前が余計なことを叫ばなけりゃ良い気持ちであそこを降りれたのによっ!!」
 太田はさらに僕を締め上げる。片手に持ってた上履きを落としてしまった。
 「覚えてろよ、絶対お前を許さねえかんな。」
 太田は僕を乱暴に話すと唾をかけて他の二人と教室に戻って行った。
 その後、僕は案の定学校で変わり者扱いされるようになった。でも、普通は変わり者と呼ばれる人たちは心無い生徒らにからかわれたり笑いものにされるけど、僕の場合は違った。学校中の人が距離を置くようになった。話しかけてはくれるけど、何だか他人とゆう枠を超えて更によそよそしくなった。ここで僕は本音を言いすぎると、嫌われることを学んだ。
 
 

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