小説『先生は女子大生』
作者:相模 夜叉丸()

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先生との会話もまた休憩と言うことで、それぞれのことをし始める。先生は中吊りの政治面を読み始めた。多分だけど。僕は、外の景色を見ていた。トンネルを抜けると外には広い空が広がり、その下には大きな川や河川敷が見える。河川敷にはバーベキューをしてる人たちが大勢いた。この暑い夏の空の元、楽しそうにしてるなぁ。川もとうとうと流れている。
 夏か。過去を振り返ってみると、高校生になってから夏らしい遊びをしてない気がする。夏らしいというと無数にあるが、まぁ友達と花火とか、夏祭りに行くとか、海に行くとか。そんな学生っぽいことをやらなかった気がする。友達とゆう友達がいないから仕方のないことだが。
 「次はぁ〜、溝ノ内〜、溝ノ内〜。北部線、中井町線はぁ〜お乗換えです。」
 駅員のアナウンスが入った。中川家の物真似を思い出す。夏休みとは関係ないが、物真似芸人に物真似されてる人、例えば北島三郎をテレビで見るとコロッケを思い出してしまう。さんまを見ると原口あきまさを思い出してしまう。メインよりそっちの方が気になってしまうことが多々ある。何だかお粗末な話だ。
 ・・・と、ミーハーな考えを巡らしていた。溝ノ内駅を通ったということはあと10分くらいでついてしまう。先生は僕の利用する最寄駅の2つ後の駅の近くに住んでる。僕が先に降りちゃうことになるな。
 窓の外に目を向け、電車が進むたびに変わっていく風景を眺めていたら僕の右肩に何かが軽くぶつかった。それと当時にシャンプーのいい匂いが鼻に漂う。その方向を見てみると、先生が僕に寄りかかって居眠りしていた。手を相変わらず膝の上で重ね、静かに寝ている。僕は、その時何だか胸が軽くキュンとするのが分かった。僕はそれを感じた途端に先生から目を離したが、もう1回先生の顔を覗いてみる。無防備に僕に寄りかかってスヤスヤと寝息を立ててる先生はとても絵になっていた。冷房のよく効いた車内で気持ち良くなってしまったんだろう。
 「・・・。」
 先生にかまけていると、どこかから視線を感じた。向かいの席からだ。僕はそっちを見てみると、僕の高校ではない他校の学生が羨望の眼差しで見ていた。僕は彼らに目を向けた。彼らはサッと視線を外した。・・・考えてみよう。電車に並んで座って女性が男性の肩に頭を寄せる図は、恋人同士の図以外の何物でもない。少なくとも彼らには僕と先生がそうゆう関係に見えたのだろう。しかも僕みたいな大してかっこよくもない男が何で?という意味も込められてるはず。
 先生は、相変わらずスヤスヤ眠ってた。僕はヘタに動くことはできない。先生が起きてしまう。とりあえず起こさないように静かに過ごそうか・・・・。
 「・・・・むふふふふ。」
 
 「何よ、さっきからニヤニヤして。」
 夕方の食卓で、姉は僕の隣からヤジを入れる。家に帰ってからも、電車での出来事を思い出すたびに、何かいい思いしたなぁと思って、顔がにやけてしまう。
 「気色悪いなぁもう・・・。」
 姉は呆れ顔でご飯を食べた。・・・・ああ、またあんなこと起きないかなぁ!


 それから時がたって、9月になっていた。暑い夏も終わったかと思われたがまだ暑さが残る。残暑だ。長い夏休みの夏期講習も残り10日間受け、昨日の8月31日をもって終わった。
 

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