小説『常識知らずの『男執事』は『女羊』になりました。』
作者:嶋垣テルヤ()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

 清々しい朝のハーブティーは格別。それにティラミスなんてついてたら最高だ。……最高なのだけれども俺は最高じゃない。場所も場所だ。なんで生徒会室にいるんだよ。俺はこれを望んでいたんじゃないからな。
「ほっしー、元気にないね。今日は唄海特製ハーブティーなのにさ。あ、わかった! もしかしてティラミス食べたいんでしょ。今取ってあげるね」
「あの、いや、真城先輩、違います。俺が機嫌悪いのはあっちです」
 そういってある方向を指差す。ダメだ。俺の学校生活マジで、ジ・エンドだな。さようなら。
「ん〜。いいんじゃないのかな。イチ君だってあおりんだって楽しそうだよ? もしかしたらカップル成立かもね」
 ニヤニヤ言うのやめてもらえますか。なんて言えたら言ってみたい。一度でいいから、タメ口で。
 あいつらカップルになったらただのホモだろ! クラスの腐女子共が興奮するだろ! こんなやつらで! というのは実際問題中身の話だよな。蒼なんてただの女で羊だろ。いつか『メー』って鳴く時が……これは山羊か。間違えた。失敬。
「猫先輩、あーんです」
「あーん」
 うえっ。きゅ、急に吐き気が……しっかしやっぱりあいつらもうリア充確定だな。ホモだけど滅びればいいのに。爆発して二度と戻ってこなければいいのに。
「神宮さん、もしかしてハーブていーがお気に召しませんでしたか? それも当然ですよね。真城さんってばハーブティーの中にケムシ入れるんですものね。それは飲めないでしょう」
 透き通った声の主は生徒会長。しかし最後なんて言った? ハーブティーにケムシ? だから異常に色が緑なのか?
「えぇ、だってばぁちゃんの書斎に置いてあったレシピに書いてあったもんっ」
 それってあれじゃないのか? え、違うの? よく漫画とかである『これを好きな人に飲ませると貴方にメロメロになるんだよ。ケッケッケ』みたいな魔女が作る薬じゃないの? その前に生徒会これで有なの?
「すみません、今代わりにミルクティー持ってきますね。(っち、メンド)」
 ……聞こえてしまったんですが。最後なんでしょう。舌打ちとかもうさ、まさにあのどう○つの森にでてくるぺ○みじゃないですか。なんか俺ヤバいことしたよな。会長声怖ぇ。
「神宮さんすみませ〜ん。ちょっと準備に時間がかかってしまって。はい」
「あ、あぁ。ありがとうご……なんじゃこりゃ!?」
「? 何って、見てわかりませんか? ミルクティーですよ。私が愛を込めて作りました」
 いや、見た目はミルクティーなんですけど、飲みたくなくなりますよ、これ。
 なんで死んだハエとかカとか入ってるんですか!? 会長が作ったの? E、MAJIKAYO。
「すごい美味しそうでしょ? 大体の男の人たちは私が言うならって、って言って飲んでくれますよ。最後に吐瀉物の中に混じってますが。生きて帰ってきてます」
 ドMだなその人たち! いやいや最後に吐くのは目に見えてるから、俺は飲まないぞ。絶対飲まない。というかその人たち生きてるんだ。すごいな。
 不意に時計に目をやると着席ギリギリだった。
「あ、俺教室帰ります! ご馳走様でした!」
「ふぇ? あ、じゃあ私も帰ります! さようなら」
「「「「「じゃ〜ね」」」」」
 生徒会5人(2名登場していないが)に元気に見送られ俺と蒼は生徒会室を後にした。


 2限目の終了ベル。俺はつけに勢いよく頭をぶつける。無論、普通に痛い。
 生徒会といい、クラスでも俺ゴミ虫以下の好感度だよな。うぅ。
 知らないだろうけども俺は大変だった。
 1限目の休み時間、会長に呼ばれ仕方なく生徒会室に行ったのだが、そこで俺は絶望を味わった。
 会長の作った死骸入りミルクティーを俺は飲んだ。ドMだからじゃない、脅されたからだ。
「あ〜、神宮さん。これ今朝飲んでいただけなかったので飲んでください〜」
 口調が柔らかかったのに対してもう行動は悪魔だ。俺は逆らったのだが先輩に勝てるはずもなく会長の本心を見てしまった。
「あぁ”、飲まねぇと殺すぞ! こっちは死骸集めるのに苦労したんだからな!」
 とまぁ意味が通らない恐喝をされた。俺は瞬時に悟った。あぁ、先輩って意外にこういうの趣味なんだな、と。
 脅されたもまだ飲まない、俺を見て会長は勢いよく胸ぐらをつかんだ。すげぇ怖い。
 生まれて初めてがたくさんありすぎて、思考回路が停止している俺を暴いたのか、会長はニヤッと笑うなりミルクティーを無理矢理口に入れさせた。
「ぐぇっ、げほっ、げほっっ」
 急き込んだ俺を見て、よく分からないが頬を紅潮させる会長。ん? まさかこれは……
「じ、神宮さん! 大丈夫ですか? ドMを見たら興奮してしまって」
 ただのドSだったよ。これでよく会長なんて役職に就けたな。不思議だよ。
 しかし急き込んでも口の中にいる死骸たちは出てこない。生徒会室の前の廊下に水道があったのを思い出して、ドアの前まで行こうとする。
 が。
 「そう簡単には行かせませんよ〜。やはりドMはいじめられてナンボですから〜」
 意味わからん。頭おかしいんじゃないのか。てか俺ってマジ……
「『撫子様、ボクのために罵ってください』って言えたら出させますからね。授業は遅れても自分のせいですからね〜」
 ドM確定ですよね。分かります。
 授業は遅れたくない。あえて体育だかんな。遅れたりしたら死ぬ。だから俺は言ってやった。


「撫子様、ボクのために罵ってください」


 その一言を発した次の瞬間、一匹の雄豚は嬉しそうに鳴いた。


 「―ん。……ほーしばさんっ! 星葉さん?」
「……ん? はっ! え、あ、あぁ。蒼か」
 明るい声の主・館山蒼は今日も元気に学校生活を送っていた。俺もだけど。たぶん。
「あの、ひかげさんからお手紙預かってるんで、渡しに来ました」
 満面の笑みで俺に一通の手紙を渡す。またなんか入っているんだろうか。
 しかしその様子は外見から見えなく、いたって普通の手紙だった。

『いけめん君以下略。』
 以下略って聞いてませんけど? 呆れながらも本文に目をやる。
『この間星葉に渡した『ビヤークン』の取扱説明書が間違えて『ビヤークン アルナミンV』だったからちゃんとしたやつを渡すわ。では、お元気で。
ひかげ』
 はっきり言おう、『ビヤークン アルナミンV』ってなんだ。『ア○ナミンV』のパクリだよな。よく商品化できたな。それと使ってないから。『ビヤークン』なんて使ってないから。使う気しないから使ってないよ。取扱説明書なんて読まなくても健全な男子なら使い方わかるわ。
「あら、誰かと思えば星葉征夷大将軍じゃない。あ、遣隋使の方がよかったかしら? 小野妹子みたいになるけれど。遣隋使になるなら聖徳太子も必要不可欠よね。あとフィッ○ュ竹中さんもいるわよね。木造建築の回で小野妹子をフィッ○ュ竹中が『オノノイナフ』と間違えたのが意外につぼったわ」
 完全にギャグ○ンガ日和ですよね。お前漫画とか読むんだな。ビックリだわ。
「もういいから。もういいよ。ばいばい」
「……何? もしかして星葉今から人身売買でもするの? 蒼君でも売るの? 最悪ね」
 いや、売らないから。てかよく人身売買なんて言葉が出てきたな。ん? 待てよ。
「蒼君可哀想なものね。前までカッコいい美少年だったのに。今となれはロリ少女ね」
「お、乙姫、お前なんでそれを……」 
 こいつ蒼が男の時一回面識あったか? あった、な。あったよ。何回も会ってるじゃねぇか。
 蒼は当然といえば当然の顔をしている。
「決して口外するつもりはないのだけれど。だけれどよ。いい?」
 そう言って乙姫は人差し指で蒼の額を突っつく。
「蒼く……自重はするわ。蒼ちゃん、あなた女の子だとかなりロリってるから星葉みたいな変態には注意するのよ。でなければ……」
 ロリってるって言葉おかしいだろ。なんだそれ。しかし俺の問いに答えるわけもなく、乙姫は自分の筆箱から鋏を取り出した。
「僕に逆らうやつは……いったいわね! 何するのよ!」
「ふざけんな! 何いっちょ前にカッコいい決め台詞言おうとしてんの!? なんかここんところパクリ多いからやめろ! ふざけんな!」
 もうさっきといい漫画といいふざけすぎだろ! 自分で考えろ!
「あ〜、はいはい。悪かったですね。3限目始まるから席つこ〜」
 どんだけ自己中心的なんだよ。しかし3限目はなんだったけな。


「皆さん、この時間は学園祭の出し物を2つ決めたいと思います」
 学級委員長(日本男児)が仕切る。もうそんな時期なのか? まだ4月だぞ。
「早いと思っている方もいるかもしれませんが、この学校は5月の下旬に行います。ですので今から準備しないと多分間に合いません。ですので決めます」
 理屈がはっきりしていないのは置いといて、さっき『2つ決める』なんて言ってたな。何やるんだ?
「学園祭では、1クラス1つが劇か合唱、もう1つは露店などです。面倒臭いですが決めないといけないので決めましょう」
 適当だな。すんげぇ適当。めっちゃ適当。最高に適当。意味が分からないかもしれないが、これくらいの言葉で、今の『適当』を表さないと表現にならない。……日本語勉強してきます。はい。
「まず露店の方はですね、飲食を扱うものが全校で限られています。今年は全校で25組です。で、何しましょうか」
 25店て多くないか? ほぼネタとかかぶるだろ。この学校大丈夫なのか。
「メイド喫茶!」「カラオケ!」「雑貨屋!」「クレープとかいいよね」「占いの館」「薄汚いドM共が居候する養豚場」
 最後のは却下だな。てか言ったの誰だ。ドM(俺も含めて)に失礼だろ。
「んじゃあ学級委員は前に出て黒板に写してください」
 ガタガタと学級委員は席を立ち前に向かった。
 結局、多数決の結果絞られたのが「メイド喫茶・カラオケ・コスプレカフェ・雑貨屋・占いの館」になったた(流石に養豚場は採用されなかった)。
「では。多数決とって、露店を決めます」
 早く決まれ。めんどくさい。 

 

-5-
Copyright ©嶋垣テルヤ All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える