小説『虹の向こう』
作者:香那()

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無事にオペは終了したのに、一向に退院する気配はなかった。

季節は秋になり、それでもまだ退院の見込みは立っていない。

あまり本人にもゆうちゃんに聞くもの躊躇われたので、黙っていた。

どうしたのかな?リハビリがうまくいってないのかな?

おかしいなあと思っていた。

でも、お見舞いに行けば元気だし、ゆうちゃんも普通だし、電話でも何も言わない。

そして、その頃、私達はファンタシースターオンラインというゲームをやっていた。

同じく、セガの出したゲームで、四人までのパーティを作ってオンライン上で遊ぶものだった。

もちろん、オフラインで自分だけで戦ってレベルを上げていくことも出来た。

チャット機能があったから、かしまし娘三人でやる時は、時間がかかった。

戦うんだけど、一区切りついたら、話し出すものだから、ゲームしているのか、お喋りしているのかよく分からなかったけど、最初のボスだけはいつでも倒してから皆でレベルの低いキャラから戦利品を物色し、残りはお金に換えて分配していた。

博久くんは夜は消燈があるから出来ないし。

だから、お見舞いに行ってもその話はしなかったように思う。

とにかく、退院ということだけが頭にあったが、段々、私の心にある疑念がわいてきていた。

いくらなんでもおかしいということに。

博久くんは元気だが、一向に足は良くなっていない。

どうしてだろう?

何でオペも上手くいったのに、退院できないの?

不安が頂点に達しようとしていた。

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