小説『虹の向こう』
作者:香那()

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博久くんの面会謝絶が解けたのはしばらくたってからだった。

私達は早速お見舞いに向かった。

博久くんはすでに完全個室になり、器具をつけられていた。

あんな薬さえなければ、もっと元気だったのに!

でも、今更恨んでもしょうがないことだ。

博久くんの体力は見るからに落ちていた。

私達は早々に見舞いを切り上げた。

ちょうど、お母様がいらしたので、ご挨拶だけした。

「ゆうちゃんもやけど、いつも来てくれてありがとう」
「いえいえ。そんなおおげさな。当たり前ですから」
「本当に嬉しい。博久もいいお友達に恵まれちょったってことやき」

私達は照れもあって、帰った。

「おんちゃん、だいぶ弱っちょったにゃ…」
「うん…」
「病院、変えたほうがええがとちゃうかや」
「今更どこへ?」
「それは…」

雅巳くんも黙ってしまった。

沈黙が私たちを支配した。

それでも体力を使うだろうからと、しばらく見舞いは控えようとなった。

余談だが、この頃から少しずつ、私は夫である雅巳くんからDVを受けるようになっていた。

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