小説『リストラ』
作者:ドリーム(ドリーム王国)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

 ビジネスホテルに泊まるにも金を取られたばかりだ。
 考えれば警察にも届けなかった。取られ殴られ損だ。警察に届けて色々と聞かれて
 「はい、リストラに合い自棄酒を飲み泥酔している処を襲われました」
 そんな事を見っとも無くて言えない。余計に惨めになるだけだった。
 結局、駅近くの公園で野宿した。季節は5月、少し夜は肌寒いが我慢した。
 野宿はしたが、やはり一睡も出来ずに朝を迎えた。
 時刻は朝7時過ぎ、普段なら今頃は家で朝食を食べている時間だ。

 それよりも会社に遅刻する……一瞬頭を過ったが、今日はとても行く気になれない。
 会社には持っている携帯電話から仮病を使って休むと報告するつもりだ。
 そう言えば昨夜、携帯電話の電源を切っていた事に気づいた。電源を入れると留守電と
メールがいっぱい入っていた。
 殆どが家族からだ。家族にも誰にも何も言われたくないそんな気持ちで電話を切ったのだ。
 家族にはリストラされたなんてとても言えない。
 言ったら最後、みんな先行きが心配になり、高校も大学も辞めると言い出すだろう。
 そうこうしている間に9時少し前になった。まずは会社に仮病の電話する事にした。
 会社に電話で直属の上司である総務課の課長に電話した。

 「おーそうか。まぁ無理しないでゆっくり休んでくれ。こっちは心配ないから」
 あっさりしたものだ。たぶん課長の耳に入っているのだろう。心配ないだって……
 真田には必要ならないからと聞こえた。
 次に心配する妻に電話しないと会社に電話を入れるに違いない。
 その前に留守電を聞いた。殆どが妻であとは息子と娘からだった。
 真田は良い家族に恵まれたようだ。だがその優しさが今は辛い。
 結局は妻に電話出来なかった。

つづく

-3-
Copyright ©ドリーム All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える