またメールが入った。また家族からだろうと気が重くなる。
だが違った。佐竹となっていた。真田はピンと来た。その送り主は佐竹先輩であった。
普段はメールじゃなく直接電話をするのに、今日に限ってなんだろうと思った。
内容は「すぐ連絡をくれ」それだけだ。
真田の大学時代の先輩であり、今は同じ会社に勤め部署は違うが営業2課の課長である。
佐竹は課長52歳であり、彼とは大学のラグビー部でも2年間一緒だった。
会社でも仕事帰りに良く飲む、酒飲み仲間でもあった。それは今でも続いている。
真田は続いて佐竹の携帯に電話を入れた。
真田が、おはよう御座いますと言い終わらぬ内に、馬鹿野郎と怒鳴られた。
「お前なぁ、なんで俺にすぐに相談しないんだ」
「先輩……知っているんですか?」
「当たり前だ。今何処に居るんだ。家に電話したが帰って来てないと奥さんが心配して居たぞ。
家族の心配は分かるが一人で悩んでも解決しないぞ。まぁいい、今夜会おう。分かったな」
どうも佐竹を前にすると、大学時代の先輩後輩に戻ってしまう。
ラグビー部では先輩後輩は絶対だったから、今も、つい頭が上がらないが、それだけに面倒
見もいい良き先輩である。
佐竹は既に全部お見通しのようだ。佐竹は大学時代ラガーとしてその名は知れ渡っていた。
その一流ラガーの勢いで人生を猛進している。次期営業部長の噂があり、言わばエリートコースだ。
まだ早朝だ、佐竹と会うのは夜まだ時間はある。それに背広は全部ヨレヨレだ。金もない。
取り敢えず先輩の誘いが救いだ。誘われたが金は取られた……
思い出した! アッと声があげる。驚きながら財布を見た。あった! カードが残っていた。
奴等はカードを取らなかったのか? 取っても簡単に現金には出来ない。
それとも現金しか頭になかったのか、真田は改めて冷や汗が出るのと、あれ以来久し振りに笑った。
カードがあればなんでも出来る。取りあえずポロシャツや下着などを買った。
それからサウナに行き一汗かいてから朝食を食べた。
夕方まで喫茶店のハシゴをして時間を潰し、それから約束場所である新宿で佐竹と時々行く
スナックに顔を出した。
佐竹は既に待っていて、あのゴツイ顔とゴツイ身体に似あわぬ笑顔を浮かべて手を上げた。
つづく