小説『Butterfly Dance Night -完』
作者:こめ(からふるわーるど)

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「エネルギー?」
「そう、エネルギー。一度シルエットが犯人だっていう人物と一戦して……逃げられたんだけどね、犯人のエネルギーを感知したんだよ。そしたら……」
「そしたら?」
 事件の核心に触れてもいいのかと思ったが、ユーディアの続きの言葉を待った。
「とある場所に犯人がよくいることがわかったんだよ」
「それがどこか、教えてもらうことはできますか?」
 ユーディアは「いいよ。私達には何の益にもならないけどね」と笑って頷いた。ヴィオラは冷や汗が伝わるのを感じていた。

 同じ時間、同じく面会を特別処置で許されたコーベライトとフローライトは、ガラスで面会人と犯罪者と仕切られた部屋の中にいた。
 重い扉が開いてシルエットが現れた。真っ先に駆け付けたのはフローライトで、そんな彼女にシルエットは「久しぶりねぇ」と笑いかけた。
「シルエットさん……」
「時間が無いわねぇ。じっくり話していたいけれど、さっさとやっちゃいましょう?」
 フローライトの背後にいたコーベライトは頷き、用意されている椅子に座る。
 自首して自ら捕まったシルエットの目は、裏の世界から足を洗ったせいか前より輝いているように思える。そんなことを考えながらコーベライトは尋ねる。
「もしかして、なんですけど……失踪事件の犯人とか、知っていますか?」
「あらぁ、誰がそんなことを?」
 シルエットが微笑む。コーベライトはガーディアンの存在を言うべきか迷ったが「ユーディアさんのお友達が……」と言葉を濁した。
「お友達?……ああ、前に言っていたあの子かしらぁ」
「わかるんですか!」
「いいえ、あたしは会ったことはないわぁ」
「そうですか……」
 ガーディアンの存在を知っていると思われる口調でシルエットは言う。コーベライトは背後にいる監視役の兵士の視線が気になったが、今はそのようなことを考えている暇はない。そう思い、口を開こうとした。
「あたしがその犯人と一戦交えたことは知っているかしらぁ?」
「……?いえ、聞いたことはない気がします」
 シルエットはフローライトに確かめるように聞く。そしてフローライトが知らないことを知ると、真剣な表情になり「いい?この言葉を聞いたら短期決戦よぉ?」と言う。
「短期決戦……ですか」
「そうよぉ。気をつけてねぇ」
「わかりました。それで犯人の事を、少し教えてもらいたいんです」
 コーベライトは「短期決戦、かぁ」という言葉を繰り返して「教えてください」と言う。彼は背中に冷や汗が伝わるのを感じている。
 シルエットは口を開こうとしたが口を開くのをやめた。コーベライトが不審に思っていると彼女はいきなり立ち上がって手のひらをコーベライトに向けた。
 兵士が止めようとする。びっくりした表情のコーベライトは一瞬だけ自分を攻撃しようとしたのかと思ったが、背後に聞こえた、大きなバァン!という音で背後に初めて気がついた。
 面会者側を見ていた兵士もびっくりする。そこにいたのは赤い模様のある、黒いマントの人物だった。
 コーベライトはなにが起きたのかと思ったが、黒い光のシールドで事を理解する。
「貴方……口封じにでも来たのねぇ?」
 シルエットの問いに黒いマントの人物は頷くこともせず、攻撃する光を込めた手をシールドにぶつけている。黒い光のシールドを作ったのはシルエットで、部屋の机を支えに立っていると「ね、短期決戦だって……言ったでしょう?」と弱弱しく言う。
「シルエットさん!」
 フローライトは叫ぶ。シルエットは「はやく行きなさい!」とはっきりした口調で言うと、コーベライトとフローライトに光をぶつけ、別の場所にワープさせた。
 いきなり出てきた黒いマントに赤い刺繍の人物は、仮面越しで舌打ちをして消えていく。その部屋にいた兵士達は「すぐに伝えるんだ!」と部下や上司に指示を出していた。
 エネルギーを操ることのできるシルエットは、能力を使ったことで体力を消耗したらしく、ぐったりとしながら兵士に運ばれていった。

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