小説『Butterfly Dance Night -完』
作者:こめ(からふるわーるど)

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 いきなり集合命令が出たので何事かとカルサイトは思った。拠点に帰ると、同じく集合命令が出された者達がおり、カルサイトはそれを不気味だと思った。
「……カルサイト先輩」
 そっと近づいてきたのはソラで、彼もまた「不気味ですね」と言った。カルサイトとソラはなるべく後ろ側におり、二人で話していてもわからないような状況を作った。
 カルサイトは小声で「なんなのかしら……」と呟く。ソラは小さく頷くと部屋にいた黒いマントの集団がざわりと騒ぎだした。
 そこで少しだけ声が上がる。それは恐怖の声もあり、好奇心の声もあった。そこでカルサイトは「面白がって事件に関わっている人もいるのよね」と言った。ソラは黙っている。カルサイトの呟きは聞こえ、この事件ははやく解決しないといけないと思った。
 集団の騒ぎは大きくなり、何だろうとカルサイトは少し首を伸ばす。集団の後ろにいるため最初はわからなかったが「トップだ!」という誰かの声が聞こえた。
 その言葉にソラは眉間に皺を寄せた。トップと呼ばれた人物は全体を見渡せそうな高めの岩の上に立つ。
 窓があいている拠点の部屋。風が少しなびいてマントが翻る。その時トップもフードを被っていたのだが、風でフードが風と遊ぶ。その時見たものは、カルサイトとソラに衝撃を与えた。
 目を見開いているのはカルサイト。「嘘」と呟いたのはソラだった。トップとは話をしたことはあまりないのだが、岩の上に立つトップが口を開いて大きく言おうとする。その声に聞き覚えがあることをソラは思い出した。
 トップであり学校の教師であるキルカルはこう命令した。
「最後になるべく、多くの人を」
 意味ありげな言葉だったが、一瞬でわかる言葉だった。
 その言葉に賛成する人もいれば、仮面越しでもわかるような重い感情を抱いている人もいることをソラは感じた。
 ソラは急に自分が失踪事件に関与していた時を思い出した。その時は失踪事件というものは公に出ておらず、メディアにも取り上げられることはなかったのだが……その時にもこんな状況があったことを思い出す。
 面白半分で関わっていた人もいたよね。そう先ほどのカルサイトではないが、心の中の言葉を口に出そうとしたソラは黙った。
 トップからの指令が出され、楽しんでいるような人と憂鬱そうな人を見ながら、命令に従うふりをして二人も部屋を出る。どうしよう、これでは被害者が増えてしまう……そう考えたソラを見たカルサイトはこう言った。
「トップの正体はわかったわね」
「はい……」
「……ショックなのはわかるわ。私もショックよ」
「まさか先生が関わっているとは知りませんでした」
 不自然の内容に二人は同じタイミングで翼を作って飛んだ。カルサイトは落ち込んでいるソラに小声で「私はトップをちょっと追跡してみるわ」と言い、ソラが頷くと「ソラは学校に行ってみてくれない?」と言った。
「わかりました」
「情報あったら、教えてね」
 カルサイトは自分の腕に巻いている、連絡機能のついているリストバンドをトントンと指で叩き別方向へ飛んで行ってしまった。
「学校…………」
 小さく呟いたソラは、学校にはやく知らせないと!という決心で飛んだ。目指すはベルメン士官候補育成学校。

 マスコミが張っている入口を避けて、ひっそりと学校に入るとアマを見つけた。小さな声で「先生、先生!」と呼ぶと、アマはびっくりしたような顔をして「どうしたの?貴方達……」と言う。
「先生、ちょっと声が大きいです……ちょっと小声でお願いします」
 ヴィオラが小声で言うと、アマは不思議そうな顔をして周囲の窓を気にしながらヴィオラ達の方へ来る。窓を気にしているのはマスコミのせいかなと思った。
「……それで、どうしたの?」
「キルカル先生はいますか?」
 アマはしばらく考えたあと「今日も朝から欠席なのよ、キルカル先生」と言い「何か用事?」と言う。
「用事と言うか……大事な話というか……なんですけど……」
 不思議そうな顔をして、意味が掴めていないアマに言おうかどうしようか迷っているのはコーベライト。ヴィオラはコーベライトをつつき「言わないと解決にならないだろ」と言った。
「……そうだね」
「本当にどうしたの?貴方達……」
「失踪事件の犯人、わかったんです」
 そう言うとアマの目は見開かれ、窓の外だけではなく周囲も気にした。
「詳しく教えてくれないかしら」
「ここで、でいいんですか?」
 ヴィオラの言葉に考えるアマ。考えた末に「他の先生方にも聞いてもらったほうがいい話ね」と、アマは三人を会議室に連れて行く。
 会議室へ移動する途中でコーベライトは「信じてもらえるかな」と呟く。ヴィオラも同じことを思っていたらしく「わからない」と曖昧に答えるしかなかった。フローライト不安そうな顔をして、さきほどのように行き成り攻撃をしかけられたりしないかと、周囲をきょろきょろと見ていた。
「先生方、失礼します」
 職員会議中だったのだろう。職員室には全教師がいた。

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