小説『Butterfly Dance Night -完』
作者:こめ(からふるわーるど)

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お辞儀をして会議室に入ると、気難しい考古学の先生が「何をやっているんだ、お前達」と言った。
 他の先生は疲れきっている様子だったが、アマは「この子達の話を聞いてあげてください」と言う。「話ってなんだ?」と聞く先生もいたが、アマは三人を先生達の前に立たす。
「失踪事件の犯人のこと、詳しく教えてくれる?」
 アマの真剣な言葉に他の先生達の顔が変わる。フローライトはコーベライトを見、コーベライトはどうしようかという表情でヴィオラを見た。ヴィオラは少し緊張しながら、先生達に言う。
「犯人はキルカル先生です。……信じられないかもしれませんが」
 会議室はざわめいた。先生の中には嘘をついているというような、目で見ている先生もいたが、考古学の先生が黙らせて「何故そうだとわかったんだ?」と聞いた。
「賞金首のユーディアさんとシルエットさんを知っていますか」
「ああ、この前自首した賞金首だな?」
 一番真剣に聞いている考古学の先生は、続けるように促す。視界の隅にいるアマを見ると、アマは信じられないと言う顔をしていた。
「その二人が教えてくれたのもありますし、俺達が実際に戦闘をしたときに、素顔を見たと言うのもあります」
「ふむ……」
 考古学の先生は唸る。コーベライトは信じてもらえていないなと感じていると、他の先生が「先生と戦ったんだね?」と言う。
「はい、たしかに俺とコーベライトは戦いました」
「じゃあキルカル先生の能力は知っている?」
 その言葉に顔を見合わせるヴィオラとコーベライト。しばらく黙っていると、先ほど質問した先生が「じゃあ質問を変えよう。エネルギーで攻撃してきたかい?」と問うた。
 ヴィオラはあの時の状況を思い出し「はい」と言った。
「光の色、わかる?」
「たしか赤色でした」
「じゃあ先生の二つ目の能力は知っているかな?」
 優しく尋ねる先生。そこで緊張が解けていたが「そこまでは分かりませんでした……」と言った。
 他の先生達が唸っている。信じられないという様子もあるが、キルカル先生がそんなことをするはずがないと言いたげな様子の先生もいた。
「お前達は戦って、素顔を本当に見たんだな?」
 考古学の先生が詰めるように尋ねる。三人は声をそろえて「はい」と言うと、考古学の先生含め、先生達は唸った。
 やっぱり信じてもらえていないな。そう感じていると、メモ帳に顔を落としていた考古学の先生が呟くように言った。
「……私には、この三人が嘘を言っているとは思えんよ」
その言葉に俯いていた顔を三人は上げた。
「だが本当にキルカル先生が犯人かは、怪しい」
三人を見ながら、考古学の先生は「情報がまだ曖昧だ。もう少し詳しい情報がほしいところだな」と言う。
「詳しい情報……ですか」
「他にないかね?」
 他に情報がないか、頭の中を総ざらいする。だがこれといった情報はなく、コーベライトとフローライトは顔を見合わせる。コーベライトはヴィオラを見るが、彼も自分の持っていた情報を出しつくした後だった。
 黙っているだけで時間は過ぎ、時計のチクタクという音が部屋の中にある音だ。三人が答えきれずに黙っていると、ドアをノックする音が聞こえた。
首を傾げて「生徒かしら?」アマがドアを開けようとすると、先にドアの方が勢いよく開いた。それにびっくりしたアマを見て「す、すみません……」と言う者がいた。
ドアを開けたその姿を見て、ヴィオラ達含めその部屋にいた全員がびっくりしている。アマは目の前にいるその人物を見て何も言えずに、ただびっくりしていた。
「……ソラ先輩?」
 口を開いたのはコーベライト。ドアを開いた顔は間違いなく失踪したソラで、ソラは「コーベライト君達もいたんだね!」と嬉しそうな表情で言った。
「ソラ?ソラなのね?」
 アマはおそるおそるといった様子で問う。ソラは「ご心配おかけしました」と頭を下げると会議室に入りドアを閉め、黒いマントを脱いだ。
 アマ以外の他の先生達も「失踪したはずでは?」とびっくりしている。ソラはきょろきょろと周りを気にするように周囲を見る。アマは「どうしたの?」と問うと、ソラは言いにくそうに「失踪事件のトップ……いや、犯人にマークされているかもしれないんです」と言う。その言葉でだいたいのことを理解した先生達は、会議室のカーテンを閉めた。

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