小説『Butterfly Dance Night -完』
作者:こめ(からふるわーるど)

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カーテンを閉めると「これで大丈夫かい?」と問われた。ソラは「はい、ありがとうございます」と言うと「ヴィオラ君達の話、信じてください!」と言った。
 ヴィオラ達はまだ状況がつかめていないでいると、ソラはヴィオラに「キルカル先生が失踪事件の本当の犯人、だよね」と言う。
 ヴィオラ達は顔を見合わせ、そしてソラを見て頷いた。
「僕も証人です」
 ソラは力強く言う。コーベライトはその言葉が嬉しく「先輩……」とソラを見た。ソラは三人を見て「よかった、無事で!」と笑顔をみせる。
「ソラ先輩こそ……どれだけ心配したと思っているんですか!」
 コーベライトが言うとソラは「ごめん、ごめんね」と笑いかけ、もう一度「ご心配おかけしました」と頭を下げる。
「それでトップのことなんですが」
 ソラは先生達に向かって言う。ソラが「トップ」と言うと、「トップとは……?」という声が聞こえた。ソラは考えた後「失踪事件に関わっている人からトップと呼ばれている、黒い生地に赤い刺繍のマントの存在がいるんです。その者のことです」と言う。
「トップというのは……キルカル先生か?ソラもキルカル先生だと言うのか?」
「はい、この目で素顔を見ました」
 考古学の先生の言葉にソラは力強く頷く。ヴィオラ達にとって、事件の証人が増えることはとても心強いことで、嬉しかった。
 ソラは先生達に言う。
「先ほどキルカル先生と思われるトップから、失踪事件に関連する者全員に指令が出ました。……この事件、今すぐにでも解決させないと大変なことになります」
「先輩、その指令とは……?」
 ヴィオラが問うと、ソラは頷き「最後になるべく、多くの人を。という指令が出されました」と言った。その言葉で隣の先生と話す先生もいれば、真剣な表情で聞いている先生もいた。
 そこでソラは失踪事件の内容を話しはじめる。失踪した者は誰かを失踪事件に巻きこむようにと特別な力を与えられ、命令を出されると言う事、そしてその命令を果たせば自由にしてもらえるということなども話した。
「それを踏まえて、キルカル先生のもう一つの能力は人を操ることですね?」
 先ほどの会話を聞いていたのか、ソラはヴィオラ達に問うた先生に答えを出した。その先生は「そうだ……キルカル先生は確かに人を操る能力を持っている」と言う。
「……たしか先生は家にいるはずですな?アマ先生か誰か聞いておらんか?」
 考古学の先生が問うと、アマは「先生は家で休むと言っていました……」と言う。そしてはっとなる。
「マント……」
「マントがどうしたんだね?」
 一息つくと、アマは「黒い生地に赤い刺繍のマントと言ったわね?」とソラに問う。ソラは「はい、言いました」と言う。
「誰のものがわからなかったのですが、そのマントが学校にあった時があるんです」
 アマは震えた声で言った。そして連絡機能が入ったリストバンドを持っている先生が、いつのまにかキルカルの家に電話をかけたらしく「家、誰もいませんよ?」と言った。
 考古学の先生は立ちあがり、会議室を出ようとする。
「先生、どこへ行かれるのですか?」
 アマが問うと、先生は真剣な表情のまま「キルカル先生を探すのだよ」と言う。
「お前達の言葉を、私は信じる」
 考古学の先生は会議室を出る。後を追うように他の先生も席を立って会議室を出る。その間際に「私も信じるわ、貴方達の事」と言い残す先生もいた。続々と出て行き、最後に残されたのは学校の生徒四人とアマのみになり、アマは「そう……キルカル先生だったのね……」と言う。
 その表情は落ち込んでいるような絶望しているような顔だった。

 夕焼けが落ちる頃。黒い生地に赤い刺繍を施されたマントをはおったキルカルは、一人誰の目にもつかない場所にいた。
 自分の顔は見られた、そして口封じもできなかった。だから自分の情報は流れているに違いない……。そう考えキルカルは後ろを振り返った。振り返った先には一人の女性がおり、キルカルは笑みを見せる。
「よくここまで追ってきたね」
「見つかったわね……」
「私が気付かないいとでも?」
「……どこに行つもり?」
 キルカルの行動を追っていた女性ことカルサイトは尋ねた。キルカルは考える仕草をして「それは言えないよ」と笑って言った。
「情報も流れている頃よ。そろそろ指名手配されるんじゃないかしら?」
 これはキルカルへの警告だった。だが彼はカルサイトの警告を無視し、顔に笑みを張りつけたまま、逃げた。
「待ちなさい!」
 カルサイトは追う。キルカルの行こうとしている先はわからないが、今追いかけないと完全に逃げられてしまう。そして逃がすと後に大変なことになると言うことがカルサイトの頭の中にあった。

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