小説『Butterfly Dance Night -完』
作者:こめ(からふるわーるど)

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 トップことキルカルの命令が出てからは数時間が過ぎた。状況を詳しく理解した先生は住民に「外に出ないように」と呼びかける。人々は状況がよくわからず、不思議そうに見ていた。
一方、カルサイトの連絡待ちのソラはリストバンドを見ながら不安そうな表情をしていた。ヴィオラとコーベライトはキルカルがどこに行ったかわからないと思っていると、その件はソラに「僕とカルサイトさんに任せて」と言われたので任せた。そしてフローライトを置いて特別許可をもらって職員室に入る。それは職員室でキルカル先生の机を見、なにか情報がないかを確かめるためだった。
「カルサイトさん、巻きこまれていただけだったんだね」
「ああ。……よかった」
「犯人じゃなくてよかったよね」
 職員室でそのような会話を交わし、他の先生にキルカル先生の机の場所を教えてもらい、その机の前に立つとコーベライトは「あ」と言う。
「どうした?」
 机の上の書類をどかそうとしたヴィオラの手が止まった。コーベライトは「ここだ、俺が雑誌を見つけた机」と言う。
「雑誌?廃刊になったやつか?」
 そう問うと、コーベライトは「そう、その雑誌!」と頷き「この机で見つけたんだ」と言う。
「なにか手掛かりは……」
 そう言いながら少し書類をどかすと、下から原稿用紙が出てきた。その原稿用紙は論文が書かれており「先生、本に入れるつもりだったのかな?」と思いながら見、タイトルの下にあった名前にびっくりしたように言った。
「スッタード・クライン!」
「……は?」
 一瞬意味がわからなかったが、コーベライトが「雑誌の!問題作の作者!」という言葉でヴィオラは理解した。コーベライトは「ちょっと読ませて……」と丁寧に原稿用紙を扱うと「キルカル先生だったんだ……」と呟いた。
 ヴィオラも論文を見る。それは雑誌に乗っていたような問題作ではなく、普通の論文で「スッタードの著作にしては、普通……だな」と言う。
「この作者、何を書きたかったんだろうって、ずっと思っていたんだ……」
 そう言ってページをめくる。ヴィオラは思い出したように言う。
「…………そういえば、最後の内容は世界樹の内容じゃなかったか?」
 その言葉でコーベライトは論文から目をはなす。
 はっとなったような表情で「キルカル先生、世界樹のこと知っていたのかな?あの論文、すごく詳しかったし……」と言う。
「キルカル先生って一体何者なんだ」
「それは俺が聞きたいよ」
 そう言っていると、職員室のドアが勢いよく開いた。二人がびっくりしていると、フローライトとソラが「連絡!来たよ!」と興奮気味に言う。ヴィオラ達は内容を聞くために黙り、ソラは電話のような機能を付けているリストバンドを叩くと、そこから声が聞こえる。
「ソラ?学校には連絡できた?」
 カルサイトの声が聞こえ、ソラは笑顔で頷く。
「はい、無事にできました。……ところでカルサイト先輩のほうは大丈夫ですか?」
 ソラが問うと、リストバンド越しの声はしばらく黙る。どうしたのかと思い、声を発しようとするとカルサイトの声が聞こえた。
「今トップを追っていたんだけど……」
「どうかしたんですか?」
「ここ、どこかしら……見た事のない場所なの」
 カルサイトは冷静な声で、だが焦っているような声で言う。そして「逃げられないわよ!」という勇ましい声が聞こえた。そこで今トップを追いかけている途中なのかと察知した。
「トップは逃げていますか?」
「ええ、逃げられないようにがんばるわ。……ところでさっき森の中に逃げられて、入ったら景色が変わったの……」
 その声にヴィオラとコーベライトは顔を見合わせる。
「どんなところですか?」
 ソラが問うと「真っ白な場所!」という声だけが聞こえた。
「わかりました。真っ白な場所ですね、こちらでその場所を探してみます」
「お願いね」
 そういってカルサイトとの通信が切れた。ソラは唸り「白い場所?」と言う。
「そんなところあるのかな」
 独り言のように言うと、コーベライトは「俺とヴィオラ、その場所知っているかもしれません」と言う。その言葉にソラの顔は嬉しそうになり「どこだかわかるんだね?」と問う。
「はい、その場所に行ったことがあります」
 ヴィオラが言うとソラは「じゃあ二人はそこを目指してもらってもいいかな?」と言い「カルサイトさんの応援に入ってほしいんだ」と言う。
「僕も行きたいんだけれど、ここに来る途中に他の失踪関係者に見つかりそうだったんだ……だから今外にうかつに出れない状態なんだ……」
 ごめんね、と言うソラに対し、ヴィオラは「カルサイトさんの応援に入ればいいんですね?」と言う。
「うん!お願い!そして……」
「その失踪事件のトップを捕まえるんですね」
 コーベライトの言葉にソラは頷く。
「このままトップを野放しにしておくと、大変なことになる気がするんだ」

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