小説『Butterfly Dance Night -完』
作者:こめ(からふるわーるど)

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 ソラの言葉の意味を汲み取る。そしてヴィオラとコーベライトは翼を作り、窓から飛び出す。
「ごめんね……無事で帰ってきてね……」
 そう、すっかり暗くなった空の上を見上げながら言う。残るようにと言われたフローライトは「大丈夫ですよ、先輩」と笑いかける。
「お兄ちゃん達は無事に帰ってくるって、私信じています」
「……そうだね。信じようね」
 フローライトの笑顔にソラも自然と笑顔になる。二人の無事を願う事しか今はできない自分が悔しかったが、ソラは二人とカルサイトが無事に帰ってくるということを信じた。

「真っ白な場所って聖域だよね」
 飛びながらコーベライトは言う。ヴィオラは頷き「だな、それ以外に真っ白な場所はわからない……」と言う。
 そこでふとヴィオラは空中で止まる。何かあったのかと思ったコーベライトも止まり、ヴィオラを見た。ヴィオラは飛びながら目を閉じており、コーベライトは「どうしたの?」と問う。
 目を閉じたままヴィオラは「ちょっと待ってくれ」と言う。言葉どおりに少し待っているとヴィオラは目を開けた。
「キルカル先生のエネルギーを感じる……」
「え、俺感じないけど……わかるの?」
「なんとなく……どこかでコピーしてきたのかもしれない」
 そう言うと、ヴィオラは聖域に向かって飛ぶ。コーベライトは彼を追うように飛び大きな声で問う。
「ねぇ!この先って聖域だよね?」
「ああ、聖域に先生のエネルギーを感じる!」
 そう言うヴィオラを見ながら「コピー能力って便利だなぁ」と呟くのはコーベライト。そう言ったのと同時に頼もしいとも思った。
そこでふと、エネルギー探知かエネルギー操作ができる能力の持ち主にヴィオラは接触したんだなと思った。この能力を見たのは今日が最初なので、コピーしたのも最近だろう。そう思ってコーベライトは最近ヴィオラが自分の知っている範囲で会った人物の顔を思い浮かべてみる。
 色々な人の顔が出てきたが、ふとにこやかに笑う黒い女が出てきた時に「そっか」と思わず納得してしまった。
 事件が無事に終了したら、お礼を兼ねて面会をしなくてはいけないな。そうコーベライトは思い、自分が面会したときの特別処置のことを思い出す。そこで自分達は今大変なことに巻きこまれているなぁと感じた。
「コーベライト、どうした?」
 ヴィオラが振り返っていた。どうやらコーベライトの飛ぶ速度が考え事のおかげで遅くなっていたらしく、ヴィオラは気になったそうだ。心配そうに「何かあったのか?」と問う彼に「なんでもないよ!」と笑ってみせる。
「何か考え事をしていたのか?」
「……なんでわかるの」
 コーベライトの行動を当てて見せたヴィオラを見てそう言う。そういえば心を読む能力を持っている人もいたなと思い、その人物の顔を思い浮かべる。心配そうに自分達を見護る、ちょっと険しいけれど優しい人。
 ……いつのまにかコピーしたんだろうなぁ。
 そう思っていると、ヴィオラが心を読んだように口を開きかけたが、開けた口を閉ざした。
「行こうか」
「そうだな」
 そう言って二人は急いで飛ぶ。
 目的地である聖域のある場所が見えて来ると、すぐにでも降下したかったのだが、以前授業で「急降下すると骨が折れる可能性もある」と習ったことを思い出し、ゆっくりと、だがなるべく早く地面に降り立つ。

 学校で心配そうに星空を見上げているソラとフローライトは、引き続きカルサイトの連絡待ちをしていた。フローライトは胸に手をあてて「大丈夫かな……」と呟く。
「大丈夫だよ」
 そんな声が聞こえたので隣を見ると、フローライトに笑いかけているソラがいた。いつの間にか心で思っている事を口にだしていたということに気がついた彼女は「わたしったら……すみません」と赤くなって謝る。
「ヴィオラ君とコーベライト君のことが心配なんだね」
 ソラはそう言う。フローライトは恥ずかしさで顔が赤いまま「はい……」と小さく言うと、ソラは自分の心臓部に手を置いて目を閉じた。
「こうやってね、心臓の音を聞くと落ち着くんだよ」
 ソラを見ながらフローライトもそれに習う。自分の心臓の鳴っている音が聞こえる。それをしばらく聞いていると、安心を覚える。
「不思議、ですね」
 心臓の音を聞いていたフローライトは、教えてくれたソラに言った。ソラは「受け売りなんだけどね」と照れくさそうに笑う。
「ありがとうございます」
「ううん。力になれたらなら、嬉しいな」
 そう言ってまた星空を見上げる。フローライトが「無事に帰って来きて……」と目を閉じて祈る。その姿をソラは優しそうな表情で見ていた時に星空に流れ星が一つ流れたが、二人がそれに気がつくことはなかった。

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