小説『魔法少女リリカルなのは−九番目の熾天使−』
作者:クライシス()

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第十三話『仮面の男』



「八神はやてに関わるな」

 どうも煉です。

 今現在俺は変な仮面の男二人と対峙しています。

 いや、すずかを助けた後に帰っていたらこれだから理由なんて分からない。

「何故?」

「もう一度言う。二度と八神はやてに関わるな」

 話が通じない。いい加減ムカツク。

「いずれはあそこから出るつもりだが今は無理だね。あそこは居心地が良いし、なにしろまだ恩義を返せていない」

 いくら向こうから申し出たとはいえ、衣食住を提供して貰っている恩義を返さないほど俺は腐っていない。

「なら今此処で……死ね!」

 おうふ、いきなり物騒な発言だな? っと、呑気に言ってる場合じゃないな。

 バチッ!

「な、なに!?」

 かなりの速度で片方の男が突っ込んできたが、俺は手を前に翳してバリアを張って攻撃を防いだ。

「物騒だねぇ。いきなり『死ね』なんてさ? でもさ、死ねって言う事は……死ぬ覚悟は出来ているんだよな?」

「「ぐっ!」」

 俺は殺気を全開にして問うた。正直、自分の殺気なんて小さいものだと思っていたが、二人は俺の殺気に当てられて後ずさっている。

 おいおい、ノウマンの方が俺より殺気は凄かったぜ?

「じゃ、いくぜ?」

 俺はすぐさま装着し、アラウンドオービット『Fairly』を二機を展開した。

「あばよ」

 そして『Fairly』からエネルギー弾の雨が降り注ぐ。

 一応あちらさんが結界を張ってくれているようで、心置きなく破壊出来る。

「……む?」

 だが、エネルギー弾により周囲に舞った土煙が晴れるとそこには何も無かった。

【敵影ロスト。逃走されました】

 逃げた……か。まあいい。次に会った時に俺達の目的を邪魔するなら……今度こそ殺す。

「帰るぞルシフェル」

【イエス、マスター】







 蒐集を始めてから月日が流れ、12月になった。もう半分弱は蒐集を完了している。無理をすればなんとかクリスマス・イヴには間に合うかどうかと言ったところだろう。

「それでな、今日はすずかちゃんっていう友達ができたんよ!」

「そっか」

 そして今ははやてと他愛ない世間話をしている。

 それにしてもすずかと知り合ったか……。そう言えばすずかとはあれから会っていないな。勿論、月村忍からも連絡はあった。だが、それでも俺は会うことを拒否する。
 いや、実際は丁度良かったのかもしれない。正直、蒐集に手一杯で、遊んでいる暇なんて今の俺には無い。それに、自分が悪いとはいえ多少なりとも俺の事を勘ぐられた。

 今思うと恥ずかしい限りだ。あの時は久々に殺したことで気分が高揚していたのだろう。なんて俺はガキなんだろうか。

「なあ煉君、どうかしたん?」

「ん? いや、はやてがかなり嬉しそうだったから」

「そりゃ嬉しいに決まっとるやん! だって、煉君以外で友達が出来たのって初めてなんやで?」

 今までは孤独に過ごしていたからだろうな。 無理も無い。

「そうだよな。ま、なんにしろ良かったじゃないか」

「うん!」

 因みに、今日の蒐集はヴィータとシグナムの役目になっている。

 俺ははやての護衛だ。一応付けておいた方が良いとの事で、今回は俺がその当番である。

 ま、そうそう問題なんて起きないと思うが、最近はヴィータが少し心配だ。ここ最近、管理局が無人世界の魔法生物の死体を不審に思って調べているらしく、
 思うように蒐集活動が出来なくなっていた。そのため、ヴィータに焦りが出ているように思える。

「煉君、ちょっといいかしら?」

「……ああ」

 俺が悩んでいるとシャマルから呼び出しがあった。

 ……何か嫌な予感がする。

 俺は少し席を外して外に出ると、シャマルの他にザフィーラが待っていた。

「……何が起きた?」

「それが……ヴィータちゃんが管理局の魔導師に手を出したらしくて、危ない状況みたいなの」

 ……あの馬鹿野郎がっ。

「分かった。俺が行こう」

「ダメよ。煉君のソレは管理局に知られているんでしょ? それに、私達なら何とか出来ると思うから今回は私とザフィーラが行くわ。それに、シグナムもヴィータの応援に向かってるわ」

 ……確かに俺のIS、ナインボール・セラフは管理局に見られている。今は俺が関わっている子とを知られない方がいいだろう。無駄に警戒心を煽る必要も無い。

「……分かった。だが、自分達の手に負えないと判断したらすぐに俺に連絡しろ。いいな?」

「ええ、分かったわ」

「ヴィータの事なら俺達に任せて、煉は安心して待っていろ」

「ああ……そうさせてもらうよ、ザフィーラ」

 彼がそう言うなら俺も信頼しよう。彼等なら早々のことではやられはせんしな。

 俺はシャマルとザフィーラが飛び立つのを見送った後、家の中に入った。

「なあ、シャマルはどうしたん? あと、ザフィーラもおらんみたいやけど?」

「ヴィータの帰りが遅いから少し捜してくるって言ってた。シグナムも一緒に捜しているらしい」

「そうなん? ……ヴィータ、どうしたんやろ?」

「心配無いさ。どうせ寄り道して遊んでるんだろ」

 ヴィータ、すまん。少しお前の評価が下がる事を言ったが、この場合はお前が悪いから許せ。

「それもそっか。ヴィータやもんなぁ」

 ……既にはやてにもそう思われていたか。さっきの謝罪は撤回しよう。

「ま、気長に待っていよう」

「せやな」


 そして待つこと数十分。

 俺はシャマルから連絡があり、玄関の前で待っていた。勿論、馬鹿をやったヴィータをだ。

 そしてシャマル達がやってきた。ヴィータはその後ろで沈んでいた。恐らくシグナムかシャマルに怒られたのだろう。ふむ……少し軽くしておこうか?

「さてヴィータ、何か言う事はあるか?」
 
「その……ごめん、煉」

 ヴィータは俯いて呟くように言った。かなり凹んでいるように見える。

 …………ふむ、今日の所は許してやろうか。

「……早く中に入れ。風邪を引くぞ」

「……えっ?」

 俺が戸を開けて中に入ろうとするとヴィータが顔を上げて不思議そうな顔をする。

「れ、煉……怒らないのか?」

「もうシグナムやシャマルに怒られたんだろ? なら俺が言うことは何も無い。次から気をつけてくれたらいいさ」

「っ! う、うん!」

 俺の言葉にヴィータは驚き、そして少し涙目で頷いた。

「シグナムもお疲れ様」

「ああ。……そうだ煉、後で報告をしたい。時間をもらえるか?」

 報告か……俺も気になるからそのことは是非聞きたいな。

「分かった。夕食の後に聞こう」

「ああ」

 そして俺達は家の中に入る。

 その時、ヴィータははやてにお説教をされ、三日間のアイス禁止令が出された。それを聞いたヴィータは世界の終わりの様な表情をして打ち拉がれていたが、後で俺がアイスを買ってやると言うと元気を取り戻した。








「煉、私だ。入るぞ」

 夕食の後、俺の部屋にシグナムが訪れた。先ほど言っていた報告の事だろう。

「まあ座ってくれ。……それで、報告を聞かせて貰おうか?」

 俺はシグナムに座るように促し、話を聞いた。

「ああ、実は先ほどヴィータが襲った管理局の魔導師なのだが……少々厄介な事になるやもしれん」

 ほう……あのシグナムにそこまで言わせる奴が相手だったのか?

「力量は?」

「今は私達が武器の差で勝っているが、それ以外は私達よりやや劣る程だ」

 ……つまり、武器が同程度になれば苦戦を強いられる、と?

「武器の差がどれ程あるかは分からないが……。確かシグナムの武器はベルカ式と言ったな?」

「ああ、一時的に魔力を上昇させるシステムなのだが、その分身体に掛かる負担は大きい代物だ」

 ふむ……。

「私が戦った相手はベルカ式を使っていた訳ではないが、もし使用されると私でも苦戦する恐れがある」

 ほう……シグナムにそこまで言わせるほどの相手か?

「それで、敵はどんな奴なんだ?」

 シグナムにそこまで言わせた奴に興味がある。

「私が相手にしたのは金髪のツインテールに黒いバリアジャケットを着ていたな。あと魔力光は金色だ」

 ………………………………あれ? すっっっっっっごく身に覚えがあるんですけど……気のせいだよね?

「……名前は分かるか……って、分かる訳n「テスタロッサと言っていた」……おいおい」

 テスタロッサってアイツかよ……。

「知り合いか?」

「……セラフの姿なら向こうは知っている」

「……そうか」

 まったく……ヴィータも厄介な奴を引っ張って来やがったなぁ。

「いや、考えても仕方ないな」

 既に起こってしまった事を取り消すことは出来ない。なら、これからどうするかが重要だ。

「はやての事と住所は?」

「勿論知られていない」

 なら当分は大丈夫だ。

「今後は少し蒐集場所をもっと遠くにしよう。それと、管理局と対峙しても殺す事だけはしないように」

「分かっている。主の道を血で汚したくはない」

 ああ、出来ることならそれが一番だ。

「だが、もし万が一の時は……躊躇うなよ?」

「……無論だ」

 ある程度は加減してやれるが、度が過ぎればこちらもそれ相応の対処が必要になる。それに、俺には殺傷設定なんて甘い物は無い。

 管理局よ、俺達の邪魔をしてくれるなよ…………死にたくなければな?



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