小説『ダーウィンが来た』
作者:市楽()

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 最後は当然、お会計の時間だ。ここで、おれが、わたしが、いやいやここはおれが、それならわたしが、と

それぞれのガラパゴスがぶつかり合う。

その様子をレジで見ていた大将が「あんたら、みんな男だよ。胸に立派なガラパゴスを持っているよ」と

涙を我慢しながら言った。大将も随分と呑まされたので、完全にできあがっていた。

だから、「今日の勘定は全部、おれが持たせてもらう。それがおれのお客様第一のガラパゴスだ」と言って

しまったのだろう。大将の言葉におれ達は色めきたったが、奥から出てきた女将さんの

「馬鹿も休み休み言いな!」という一括で大将は素面に戻ってしまった。

女将さんの一括で大人しくなったおれ達から淡々と大将は料金を適当に徴収していった。

会計が終わったので、店を出ようとしたらダーウィンがいないことに気が付いた。

店中を見てもいないし、帰る客が開いた扉の先にもいなかった。もしやと思い、おれは便所に向かった。

便所の戸を開くとダーウィンがいた。その横にはあの紳士もいた。

二人してぐでんぐでんに酔った顔をして、便所のせまい床にへたり込んでいた。

おれが「会計は終わったから帰るぞ」と言うと、二人ともぱっと立ち上がった。

いくらでしたかと白々しく聞いてきたので、「もう済んだからいい」と言っておいた。

「えっ、そんないいんですか」とダーウィンが言えば、「いや〜、悪いですね。なんだか奢ってもらった

みたいで。この次はわたしに奢らせ下さいね」と紳士も続いた。

二人とも同じ顔を浮かべていたのが、おもしろかったのでこのままにしておくとしよう。

店の前で紳士や大工達と別れると、おれとダーウィンの二人だけになった。

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