小説『ダーウィンが来た』
作者:市楽()

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 ダーウィンが来た。珍しく土産を持っていた。

どうもしばらく見ないなと思っていたら、知合いの手伝いで発掘現場のアルバイトに行っていたらしい。

その稼ぎで日本酒と鳥肉を買ってきたのだ。

酒をねだる芝居の上とはいえ親父に言われたことと仕事を勝手に辞めたことを気にしていたらしい。

ただ、牛肉は予算的に厳しかったようだ。酒と肴を持参してきたのだから遠慮無しに3人で呑んだ。

ダーウィンは酔うといつもガラパゴス島の自然や動物達の素晴らしさを語り、最後には帰りたいとつぶやく。

今日は少し酔い過ぎたらしく「ガラパゴス、ガラパゴス・・・・ムニャムニャ」とか言いながら寝てしまっ

た。よほどガラパゴス島に帰りたいのではないだろうか。

その姿を見てしまうといつかと言わずに、そのうちいなくなってしまうのではないかと考えてしまう。

 すると寝ているダーウィンを背負ったゾウ亀が心配するな、とまるで言っているように優し気な目をおれに

向けていた。いつかはきっと来るのだろうが、まだ少し早い。

 

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